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桜 井 洋

早稲田大学国際教養学部  教授
専攻:理論社会学

現在、これまでの研究をまとめた『社会秩序の起源』という書物を執筆中です。このHPはこの書物と関係する情報を掲載しようと思いますが、残念ながらまだ本が完成していません。ほぼ8割くらい完成しているのですが、学部の仕事が多忙になったこともあり、少々遅延しています。

『社会秩序の起源』 の概要

(1)

私の研究は、現代物理学の新しい理論である非線形力学の思想に基づいています。社会学と物理学というと意外に思われるかもしれませんが、実はそうでもありません。科学は自然科学と社会科学に大別されますが、社会学がその一員である社会科学はその方法論に関してこれまでつねに自然科学を参照してきました。ここで自然科学といってもほとんどの場合、物理学を意味します。この影響は大きく分けて三つの時期にわたります。

1.古典力学
   初期の社会科学はニュートンの古典力学に代表される古典的な物理学を科学理論の範型と仰いできました。この理論は、質点として表現可能な単純な対象を考え、その物理的なふるまいを決定論的な方程式で記述するものです。こうした考え方はデカルト=ガリレイ的な機械論的自然観とうまく合致しますし、エレガントな理論を構成することができます。17世紀以来、こうした決定論的理論があらゆる科学の範型(Paradigm)となりました。社会科学では経済学のみが一見物理学の理論と相似する理論体系を構成することができました。隣接科学である社会学もまたその夢を追ったのですが、市場という小さな対象についての理論である経済学と異なり、社会全般を対象とする社会学が決定論的な理論を構成することは不可能でした。20世紀の中葉にはそのことを社会学者は認識するようになったといえます。

2.サイバネティックス Cybernetics
   しかし、20世紀の中頃になってサイバネティックスが登場し、「システム」の概念を導入しました。サイバネティックスは制御の理論であり、この点で社会とも通じるものがあると思われたのです。こうしてTarcott Parsonsによる「社会システム論」が登場し、一時期は社会学におけるパラダイムであるとみなされました。社会システム論はその後、ドイツの社会学者Niklas Luhmannによって再編成されましたが、基本的な考え方は同じです。
   パーソンズの社会システム論に対して、社会変動が説明できないという批判が多く寄せられました。これはもっともなことで、サイバネティックスというのは制御の理論ですから、要するに自己保存の理論であり、変動の理論ではないのです。

3.非線形力学 Non-linear Dynamics
   20世紀の後半になって、非線形力学が急速に進歩しました。そのキーワードは複雑性、カオスなどで、俗に「複雑系」の理論とも呼ばれています。「複雑系」というと流行りもののようですが、実はれっきとした物理学理論です。その概要は以下の参考文献を参照してください。この理論は力学系の理論ですから、本質的に変動理論です。そこで20世紀の終わり頃にこの理論に関心が集まりました。

参考文献

金子邦彦・池上高志『複雑系の進化的シナリオ』1998、朝倉書店
金子邦彦・津田一郎
1996『複雑系のカオス的シナリオ』朝倉書店
金子邦彦編『複雑系のバイオフィジックス』
,2001,共立出版
金子邦彦『生命とは何か
  複雑系生命論序説』2003、東京大学出版会
Kauffman, Stuart 1993 The Origin of Order,  Oxford University Press
―――
  1995 At Home in the Universe:The Search for Laws of Self-Organization and Complexity, Penguin Books
               (『自己組織性と進化の論理』 日本経済新聞社

―――
 2000  Investigations, Oxford University Press
蔵本由紀 2003 『新しい自然学――非線形科学の可能性』岩波書店



(2) 社会学における

→ 以下、1月2日に続く。